上界(下界)・上限(下限)・最大元(最小元)・極大元(極小元)の定義
上界(下界)・上限(下限)・最大元(最小元)・極大元(極小元)の定義
\(\left(X,\preceq\right)\)を半順序集合として\(A\subseteq X\)で\(A\)は空集合でないとする。
(1)上界(upper bound)
ある\(x\in X\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し、\(y\preceq x\)となるとき、\(x\)は\(A\)の上界であるという。
\(A\)の上界を\(U\)で表すと、\(\left(\exists x\in X,\forall y\in A,y\preceq x\right)\Leftrightarrow x\in U\)となる。
(2)上限(supremum)・最小上界(least upper bound)
\(A\)の上界全体の集合\(U\)の最小元\(x\)を\(A\)の上限といい、\(\sup A\)で表す。
すなわち\(\min U=\sup A\)となる。
(3)最大元(maximum element)
ある\(x\in A\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し、\(y\preceq x\)となるとき、\(x\)は\(A\)の最大元であるといい\(\max A\)で表される。
すなわち、\(\left(\exists x\in A,\forall y\in A,y\preceq x\right)\Leftrightarrow\max A=x\)となる。
(4)極大元(maximal element)
ある\(x\in A\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し\(x\preceq y\Rightarrow x=y\)となるとき、\(x\)は\(A\)の極大元という。
すなわち、\(\exists x\in A,\forall y\in A,\left(x\preceq y\rightarrow x=y\right)\)となる。
(5)下界(lower bound)
ある\(x\in X\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し、\(y\succeq x\)となるとき、\(x\)は\(A\)の下界であるという。
\(A\)の下界を\(L\)で表すと、\(\left(\exists x\in X,\forall y\in A,x\preceq y\right)\Leftrightarrow x\in L\)となる。
(6)下限(infimum) ・最大下界(greatest lower bound)
\(A\)の下界全体の集合\(L\)の最大元\(x\)を\(A\)の下限といい、\(\inf A\)で表す。
すなわち\(\max L=\inf A\)となる。
(7)最小元(minimum element)
ある\(x\in A\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し、\(y\succeq x\)となるとき、\(x\)は\(A\)の最小元であるといい\(\min A\)で表される。
すなわち、\(\exists x\in A,\forall y\in A,\)\(x\preceq y\rightarrow\min A=x\)となる。
(8)極小元(minimal element)
ある\(x\in A\)が存在し任意の\(y\in A\)に対し\(x\succeq y\Rightarrow x=y\)となるとき、\(x\)は\(A\)の極小元という。
すなわち、\(\exists x\in A,\forall y\in A,\left(y\preceq x\rightarrow y=x\right)\)となる。
上界と上限
上界\(x\)は\(A\)の元とは限らない。
上限\(x\)は\(A\)の元とは限らない。
最大元と極大元
\(x\)が\(A\)の最大元であるとき、任意の\(A\)の元は\(x\)以下である。
\(x\)が\(A\)の極大元であるとき、任意の\(A\)の元は\(x\)より大きくはならない。
なぜなら\(x\preceq y\rightarrow x=y\Leftrightarrow\lnot\left(x\preceq y\right)\lor x=y\Leftrightarrow\lnot\left(x\preceq y\land x\ne y\right)\Leftrightarrow\lnot\left(x\prec y\right)\)となるからである。
最大元も極大元も存在するとは限らない。
最大元は存在すれば1つであるが、極大元は存在しても1つとは限らない。
最大元ならば極大元であるが、一般的に逆は成り立たない。
最大元が存在するならばそれは一意的な極大元となる。
極大元が1つのみ存在してもそれが最大元とは限らない。
全順序集合では全ての元同士は比較可能であるので、極大元は最大元になる。
なぜなら全順序集合であるので\(\lnot\left(x\preceq y\right)\Leftrightarrow y\prec x\)となり、\(x\)が\(A\)の極大元であるとき、\(\exists x\in A,\forall y\in A,x\preceq y\rightarrow x=y\Leftrightarrow\exists x\in A,\forall y\in A,y\prec x\lor x=y\Leftrightarrow\exists x\in A,\forall y\in A,y\preceq x=\max A=x\)となるからである。
上限と最大限
最大元ならば上限であるが、一般的に逆は成り立たない。
何故なら\(\max A\)は\(A\)の上界であり、\(A\)の任意の上界を\(p\)に対し、\(\max A\leq p\)となるので上界の最小値は\(\max A\)となる。
つまり\(\sup A=\max A\)となる。
逆が成り立たないことは反例で示す。
\(X=\mathbb{R}\)として\(A=\left(-\infty,1\right)\)とすると、\(\sup A=1\)であるが\(\max A\)は存在しない。
故に逆は成り立たない。
上限は1つのみ存在する。
最大元も1つのみ存在する。
なぜなら、\(x,y\)の2つの上限が存在するなら、\(x\)が上限なので\(x\preceq y\)となり\(y\)が上限なので\(y\preceq x\)となるが反対称律より、\(x\preceq y\land y\preceq x\Rightarrow x=y\)となり\(x\)と\(y\)が等しくなるからである。
同様に、\(x,y\)の2つの最大元が存在するなら、\(x\)が最大元なので\(y\preceq x\)となり\(y\)が上限なので\(x\preceq y\)となるが反対称律より、\(y\preceq x\land x\preceq y\Rightarrow x=y\)となり\(x\)と\(y\)が等しくなるからである。
(1)
\(X=\)\(\left[0,10\right]\)、順序として普通の大小関係をとると\(\left(X,\leq\right)\)は全順序集合となり、\(X\)の部分集合\(\left(0,1\right)\)を考える。
このとき、上界は\(\left[1,10\right]\)の任意の元なら全て満たし、上限は\(\left[1,10\right]\)の最小元である\(1\)となる。
最大元と極大元は存在しない。
(2)
有理数全体の集合\(\mathbb{Q}\)に普通の大小関係を入れた全順序集合\(\left(\mathbb{Q},\leq\right)\)の部分集合
\[
A_{1}=\left\{ q\in\mathbb{Q};q\leq2\right\}
\]
\[
A_{2}=\left\{ q\in\mathbb{Q};q<2\right\}
\]
\[
A_{3}=\left\{ q\in\mathbb{Q};q^{2}\leq2\right\}
\]
について\(\sup A_{1}=\max A_{1}=2\)となるが\(\sup A_{2}=2\)であるが、\(\max A_{2}\)は存在しない。
また\(A_{3}\)については\(\sup A_{3}\)も\(\max A_{3}\)も存在しない。
(3)
\(X=\left\{ \left\{ a\right\} ,\left\{ b\right\} ,\left\{ c\right\} ,\left\{ a,b\right\} ,\left\{ b,c\right\} \right\} \)として順序として包含関係\(\subseteq\)をとると、極大元は\(\left\{ a,b\right\} ,\left\{ b,c\right\} \)となるが、最大元は存在しない。
(4)
\(X=\mathbb{R}\)や\(X=\left(0,1\right)\)は最大元も極大元も存在しない。
(5)
\(X=\mathbb{N}\cup\left\{ a\right\} \)として自然数同士には普通の大小関係を入れて、自然数と\(a\)には大小関係がないとすると、極大元は\(a\)のみであるが、最大元は存在しない。
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