対称行列の性質

対称行列の性質
対称行列について次が成り立つ。

(1)

対称行列同士の和は対称行列になる。

(2)

対称行列\(S_{1},S_{2}\)があるとき、積が対称行列となることと、\(S_{1},S_{2}\)が可換\(S_{1}S_{2}=S_{2}S_{1}\)になることは同値である。

(3)

\(S\)が対称行列であることと、任意の\(n\in\mathbb{Z}\setminus\left\{ 0\right\} \)に対し\(S^{n}\)が存在するなら対称行列になることは同値である。

(4)

対称行列\(S\)の転置\(S^{T}\)は元の行列\(S\)に等しい、すなわち、\(S^{T}=S\)となる。

(5)

対称行列\(S\)の逆行列\(S^{-1}\)は対称行列になる。
すなわち、\(S^{-1}=\left(S^{-1}\right)^{T}\)となる。

(6)

\(n\)次対称行列の独立な成分は\(\frac{n\left(n+1\right)}{2}\)個である。

(7)

実対称行列ならば正規行列であるが、逆は一般的に成り立たない。

(8)

実対称行列ならばエルミート行列であるが、逆は一般的に成り立たない。
対称行列同士の積は対称行列とは限らない。
反例は
\[ \left(\begin{array}{cc} 0 & 1\\ 1 & 1 \end{array}\right)\left(\begin{array}{cc} 0 & 1\\ 1 & 0 \end{array}\right)=\left(\begin{array}{cc} 1 & 0\\ 1 & 1 \end{array}\right) \] である。

(1)

\(S_{1},S_{2}\)を対称行列とする。
\begin{align*} \left(S_{1}+S_{2}\right)_{i,j} & =\left(S_{1}^{T}+S_{2}^{T}\right)_{i,j}\\ & =\left(\left(S_{1}+S_{2}\right)^{T}\right)_{i,j}\\ & =\left(S_{1}+S_{2}\right)_{j,i} \end{align*} となるので、\(S_{1}+S_{2}=\left(S_{1}+S_{2}\right)^{T}\)となる。
従って題意は成り立つ。

(2)

\(\Rightarrow\)

\(S_{1},S_{2}\)の積が対称行列になるとき、\(S_{1}S_{2}=\left(S_{1}S_{2}\right)^{T}\)であり、
\begin{align*} S_{1}S_{2} & =\left(S_{1}S_{2}\right)^{T}\\ & =S_{2}^{T}S_{1}^{T}\\ & =S_{2}S_{1} \end{align*} となるので\(\Rightarrow\)が成り立つ。

\(\Leftarrow\)

\(S_{1}S_{2}=S_{2}S_{1}\)であるとき、
\begin{align*} S_{1}S_{2} & =S_{2}S_{1}\\ & =S_{2}^{T}S_{1}^{T}\\ & =\left(S_{1}S_{2}\right)^{T} \end{align*} となるので\(S_{1}S_{2}\)は対称行列となる。
従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。

\(\Leftrightarrow\)

これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。

(3)

\(\Rightarrow\)

まず、\(n\)が正の整数について証明する。
\(n=1\)のとき明らかに\(S^{1}\)は対称行列である。
\(n=k\)のとき成り立つとすると、\(S^{k}S=SS^{k}\)となり可換なので\(S^{k+1}\)は対称となる。
従って数学的帰納法より\(n\in\mathbb{N}\)のとき、\(S^{n}\)が対称行列になる
次に\(n\)が負の整数について証明する。
このとき、\(S^{n}\)が存在するには逆行列が存在しなければいけないので存在する場合について考える。
\(n=-1\)のとき対称行列\(S\)の逆行列\(S^{-1}\)は対称行列になるので成り立つ。
\(n=-k\)のとき成り立つとすると、\(S^{-k}S^{-1}=S^{-1}S^{-k}\)となり可換なので\(S^{-k-1}\)は対称行列となる。
従って数学的帰納法より\(n\in\mathbb{N}^{-}\)のとき、\(S^{n}\)が対称行列になる
これより、\(n\in\mathbb{Z}\setminus\left\{ 0\right\} \)のとき、\(S^{n}\)が存在するなら対称行列になるので\(\Rightarrow\)が成り立つ。

\(\Leftarrow\)

まず、\(n\in\mathbb{N}\)について証明する。
条件より\(S^{n}\)が対称行列であり、\(S^{n-1}S=SS^{n-1}\)と可換になるので、\(S,S^{n-1}\)は対称行列になる。
次に\(n\in\mathbb{N}^{-}\)について証明する。
このとき、\(S^{n}\)が存在するには逆行列が存在しなければいけないので存在する場合について考える。
条件より\(S^{n}\)は対称行列であり、\(S^{n+1}S^{-1}=S^{-1}S^{n+1}\)と可換になるので、\(S^{-1},S^{n+1}\)は対称行列になる。
\(S^{-1}\)が対称行列のとき、\(S\)も対称行列になる。
これより、\(n\in\mathbb{Z}\setminus\left\{ 0\right\} \)のとき、\(S\)が対称行列になるので\(\Leftarrow\)が成り立つ。

\(\Leftrightarrow\)

これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。

(4)

\begin{align*} \left(S^{T}\right)_{i,j} & =\left(S\right)_{j,i}\\ & =\left(S\right)_{i,j} \end{align*} となるので\(S^{T}=S\)となる。
従って題意は成り立つ。

(5)

\begin{align*} I & =SS^{-1}\\ & =\left(SS^{-1}\right)^{T}\\ & =\left(S^{-1}\right)^{T}S^{T}\\ & =\left(S^{-1}\right)^{T}S \end{align*} \begin{align*} I & =S^{-1}S\\ & =\left(S^{-1}S\right)^{T}\\ & =S^{T}\left(S^{-1}\right)^{T}\\ & =S\left(S^{-1}\right)^{T} \end{align*} となるので、\(S^{-1}=\left(S^{-1}\right)^{T}\)となる。
従って題意は成り立つ。

(6)

\(n\)次対称行列は\(n\times n\)行列であり、独立な成分の個数は区別出来る\(n\)個の中から重複を許して2個選ぶ場合の数なので\(H\left(n,2\right)=C\left(n+2-1,2\right)=C\left(n+1,2\right)=\frac{\left(n+1\right)n}{2}\)個となる。
従って題意は成り立つ。

(7)

\(\Rightarrow\)

実対称行列\(S\)は\(S^{T}=S\)かつ\(S^{*}=S^{T}\)を満たすので、
\[ SS^{*}-S^{*}S=SS^{T}-S^{T}S=S^{2}-S^{2}=O \] となるので正規行列となる。
従って\(\Rightarrow\)が成り立つ。

逆は一般的に成り立たない

反例で示す。
\[ A=\left(\begin{array}{cc} 0 & i\\ -i & 0 \end{array}\right) \] は正規行列であるが、実対称行列ではない。
従って逆は一般的に成り立たない。

(8)

\(\Rightarrow\)

実対称行列\(S\)は\(S^{T}=S\)かつ\(S^{*}=S^{T}\)を満たすので、\(S^{*}=S^{T}=S\)となりエルミート行列となる。
従って\(\Rightarrow\)が成り立つ。

逆は一般的に成り立たない

反例で示す。
\[ A=\left(\begin{array}{cc} 0 & i\\ -i & 0 \end{array}\right) \] はエルミート行列であるが、実対称行列ではない。
従って、逆は一般的に成り立たない。
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タイトル
対称行列の性質
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https://www.nomuramath.com/ib11rkxj/
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