正則行列の性質
正則行列の性質
正則行列について次が成り立つ。
すなわち\(\det\left(A\right)\ne0\Leftrightarrow\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)が成り立つ。
正則行列について次が成り立つ。
(1)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則であることと、\(\det\left(A\right)\ne0\)となることは同値である。(2)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則行列であることと、0を固有値にもたないことは同値である。(3)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則であることと、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)を満たす解は自明な解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)しかないことは同値である。(4)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則であることと、\(\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)であることは同値である。すなわち\(\det\left(A\right)\ne0\Leftrightarrow\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)が成り立つ。
(5)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則であることと、零因子ではないは同値である。その他次が成り立つ。
(1)
\(n\)次正方行列\(A\)があるとき、\(A\)が正則であることと、階数は\(n\)、すなわち、\(\rank\left(A\right)=n\)となることは同値である。(1)
\(\Rightarrow\)
\(A\)が正則であるとき、逆行列\(A^{-1}\)が存在し、\(A^{-1}=\frac{\adj\left(A\right)}{\det\left(A\right)}\)なので\(\det\left(A\right)\ne0\)となる。従って\(\Rightarrow\)が成り立つ。
\(\Leftarrow\)
\(\det\left(A\right)\ne0\)であるとき、逆行列\(A^{-1}=\frac{\adj\left(A\right)}{\det\left(A\right)}\)が存在するので正則となる。従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。
\(\Leftrightarrow\)
これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。(2)
\(\Rightarrow\)
\(n\)次正則行列\(A\)が0を固有値にもつと仮定する。このとき、\(A\boldsymbol{x}=0\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)となる\(\boldsymbol{x}\ne\boldsymbol{0}\)が存在するが、\(A\)は正則なのでこれを満たす\(\boldsymbol{x}\)は\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)のみである。
しかし固有ベクトルは\(\boldsymbol{0}\)以外なので矛盾。
従って背理法より、\(A\)は0を固有値にもたない。
故に\(\Rightarrow\)が成り立つ。
\(\Leftarrow\)
対偶を示す。すなわち、\(A\)が正則行列でないとき、少なくとも1つは0を固有値にもつことを示す。
\(A\)の\(n\)個の固有値を\(\lambda_{1},\lambda_{2},\cdots,\lambda_{n}\)とすると\(\det\left(A\right)=\prod_{k=1}^{n}\lambda_{k}\)であり、条件より\(A\)が正則行列でないので\(0=\det\left(A\right)=\prod_{k=1}^{n}\lambda_{k}\)となる。
これが成り立つには\(\lambda_{1},\lambda_{2},\cdots,\lambda_{n}\)のうち1つは0でなければいけない。
従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。
\(\Leftrightarrow\)
これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。(3)
\(\Rightarrow\)
自明な解以外の解\(\boldsymbol{x}\ne\boldsymbol{0}\)があると仮定する。\(A\)は正則であるので逆行列\(A^{-1}\)をもつので、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)の両辺に左から\(A^{-1}\)を掛けると、\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)となり矛盾。
従って背理法より、自明な解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)のみとなり題意は成り立つ。
\(\Leftarrow\)
条件より、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}=0\boldsymbol{x}\)を満たす解は自明な解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)しかないので0は固有値ではない。\(A\)が正則行列であることと、0を固有値にもたないことは同値であるので、\(A\)は正則となる。
従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。
\(\Leftrightarrow\)
これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。(4)
\(A\)が正則であることと、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)を満たす解は自明な解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)しかないことは同値であることを使う。また、次の2つが成り立つ。
\(A\)が正則であることと、\(\det\left(A\right)\ne0\)であることは同値である。
\(\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)であることと、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)を満たす解は自明な解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)しかないことは同値である。
これらより、\(\det\left(A\right)\ne0\Leftrightarrow\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)となるので題意は成り立つ。
別解
\(A\)が正則であることと、\(\rank\left(A\right)=n\)となることは同値であるので、\(\rank\left(A\right)=n\)であることと、\(\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)であることは同値であることを示す。次元定理より、\(n=\rank\left(A\right)+\dim\left(\ker\left(A\right)\right)\)なので、\(\rank\left(A\right)=n\)であることと、\(\ker\left(A\right)=\boldsymbol{0}\)であることは同値である。
故に題意は成り立つ。
(5)
\(\Rightarrow\)
行列\(A\ne O\)が零因子であると仮定する。このときある\(B\ne O\)が存在し、\(AB=O\lor BA=O\)となる。
条件より、行列\(A\)は正則であるので逆行列\(A^{-1}\)が存在する。
\(AB=O\lor BA=O\)が成り立つので、両辺に左または右から\(A^{-1}\)を掛けると、\(B=O\lor B=O\Leftrightarrow B=O\)となり、\(B\ne O\)であるので矛盾。
従って背理法より、\(A\)は零因子でない。
故に\(\Rightarrow\)が成り立つ。
\(\Leftarrow\)
対偶で示す。正則でなければ零因子となるを示せばいい。
\(n\)次行列\(A\)が正則でないとき、ある列ベクトル\(\boldsymbol{x}\ne\boldsymbol{0}\)が存在し、\(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)となる。
この\(\boldsymbol{x}\)を用いて\(B=\left(\boldsymbol{x},\boldsymbol{0},\boldsymbol{0},\cdots,\boldsymbol{0}\right)\ne O_{n}\)とすると、
\begin{align*} AB & =A\left(\boldsymbol{x},\boldsymbol{0},\boldsymbol{0},\cdots,\boldsymbol{0}\right)\\ & =\left(A\boldsymbol{x},A\boldsymbol{0},A\boldsymbol{0},\cdots,A\boldsymbol{0}\right)\\ & =\left(\boldsymbol{0},\boldsymbol{0},\boldsymbol{0},\cdots,\boldsymbol{0}\right)\\ & =O_{n} \end{align*} となるので\(A\)は零因子となる。
従って\(\Leftarrow\)が成り立つ。
\(\Leftrightarrow\)
これらより、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。ページ情報
| タイトル | 正則行列の性質 |
| URL | https://www.nomuramath.com/ejncfjy1/ |
| SNSボタン |
トレースの性質
\[
\tr\left(AB\right)=\tr\left(BA\right)
\]
逆行列の性質
\[
\left(AB\right)^{-1}=B^{-1}A^{-1}
\]
エルミート転置の性質
\[
\left(AB\right)^{*}=B^{*}A^{*}
\]
複素共役行列の性質
\[
\overline{AB}=\overline{A}\overline{B}
\]

