距離空間の有界・直径と全有界の定義

距離空間の有界・直径と全有界の定義

(1)距離空間の有界・直径

距離空間\(\left(X,d\right)\)が与えられているとき、部分集合\(A\)のある元\(b\in A\)とある\(r>0\)が存在し、任意の元\(a\in A\)に対し、\(d\left(a,b\right)<r\)となるとき\(A\)は有界であるという。
\(A\)が有界であるとき、集合\(A\)の直径(diameter)を
\[ \diam\left(A\right):=\sup\left\{ d\left(a,b\right);a,b\in A\right\} \] で定義する。
有界でないときは\(\diam\left(A\right)=+\infty\)と定義する。

(2)距離空間の全有界

距離空間\(\left(X,d\right)\)が任意の\(\epsilon>0\)に対し、ある\(X\)の有限個の点\(x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\)が存在し、\(X=U\left(x_{1};\epsilon\right)\cup U\left(x_{2};\epsilon\right)\cup\cdots\cup U\left(x_{n};\epsilon\right)=\bigcup_{k=1}^{n}U\left(x_{k};\epsilon\right)\)とできるとき\(\left(X,d\right)\)は全有界という。
または任意の\(\epsilon>0\)に対しある有限集合\(B\subseteq X\)が存在し、\(X\subseteq\bigcup_{b\in B}U\left(b,\epsilon\right)\)とできるとき\(\left(X,d\right)\)は全有界という。
ここで\(U\left(x_{1};\epsilon\right)\)は\(\epsilon\)近傍である。
すなわち、任意の\(\epsilon>0\)に対し各元が半径\(\epsilon\)の有限被覆が存在するとき、\(X\)は全有界であるという
\(\left(X,d\right)\)の部分距離空間\(\left(A,d_{A}\right)\)についても同様に全有界が定義される。
距離空間\(\left(X,d\right)\)があるとき、\(X\)の部分集合\(A,B\subseteq X\)について、\(A\subseteq B\Rightarrow\diam\left(A\right)\leq\diam\left(B\right)\)が成り立つ。
\begin{align*} \diam\left(A\right) & =\sup\left\{ d\left(a,b\right),a,b\in A\right\} \\ & \leq\sup\left\{ d\left(a,b\right),a,b\in B\right\} \\ & =\diam\left(B\right) \end{align*} となるからである。

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\(A\subseteq X\)が有界であることと、任意の\(x\in X\)に対し、ある\(r>0\)が存在し、\(A\subseteq B\left(x,r\right)\)となることは同値である。

\(\Rightarrow\)

有界であるとき、ある\(a\in A,r>0\)が存在し、\(A\subseteq B\left(a,r\right)\)である。
このとき、任意の\(x\in X\)に対し、\(b\in A\)として\(d\left(x,a\right)\leq d\left(x,A\right)+\diam\left(A\right)\)となるので、\(d\left(x,A\right)+\diam\left(A\right)\leq r\)ととれば\(a\in B\left(x,r\right)\)となるので、\(A\subseteq B\left(x,r\right)\)となる。

\(\Leftarrow\)

任意の\(x\in X\)に対し、ある\(r>0\)が存在し、\(A\subseteq B\left(x,r\right)\)となるとき、\(x\)を\(A\)から選べば明らかに有界となる。

\(\Leftrightarrow\)

従って\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立つ。
距離空間\(\left(\mathbb{R},d\right)\)を実数\(\mathbb{R}\)と通常距離\(d\)をとるとする。
\(\left[0,1\right)\)は\(b=0,r=1\)と選ぶと任意の\(b\in\left[0,1\right)\)に対し、\(d\left(a,0\right)<1\)なので有界であり、直径は\(\diam\left(A\right)=\sup\left\{ d\left(a,b\right);a,b\in\left[0,1\right)\right\} =1\)となる。
\(\left[0,1\right)\)は任意の\(\epsilon>0\)に対し、\(B=\left\{ \epsilon n;n\in\left\{ 0,1,\cdots,\left\lceil \frac{1}{\epsilon}\right\rceil -1\right\} \right\} \)とすると、\(\left[0,1\right)\)\(\subseteq\bigcup_{b\in B}U\left(b,\epsilon\right)\)となるので全有界となる。
\(\left[0,\infty\right)\)は任意の元\(b\in A\)と任意の\(r>0\)に対し\(a=b+r\)ととれば\(d\left(a,b\right)\geq r\)となるので有界ではなく、\(\diam\left(A\right)=+\infty\)となる。
\(\left[0,\infty\right)\)は全有界と仮定すると、任意の\(\epsilon>0\)に対しある有限集合\(B\subseteq X\)が存在し、\(X\subseteq\bigcup_{b\in B}U\left(b,\epsilon\right)\)と被覆できるが、点\(\max\left(B\right)+\epsilon\)は被覆できてないので矛盾となり背理法より全有界ではない。

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距離空間の有界・直径と全有界の定義
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