部分ベクトル空間(線形部分空間)の定義と性質

部分ベクトル空間(線形部分空間)の定義と性質

部分ベクトル空間(線形部分空間)の定義
体\(K\)上のベクトル空間\(V\)の空でない部分集合\(W\subseteq V\)に対し、\(V\)と同じ演算で次の2条件を満たすとき\(W\)を\(V\)の部分ベクトル空間または線形部分空間または部分空間という。

(a)零元

\[ \boldsymbol{0}_{W}\in W \]

(b)和

\[ \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W\rightarrow\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}\in W \]

(c)スカラー倍

\[ a\in K,\boldsymbol{x}\in W\rightarrow a\boldsymbol{x}\in W \]
部分ベクトル空間(線形部分空間)の性質

(1)

体\(K\)上のベクトル空間\(\left(V,+,\cdot\right)\)の部分空間\(\left(W,+,\cdot\right)\)はベクトル空間になる。

(2)

\(K\)上のベクトル空間\(V\)があり、部分空間を\(W\subseteq V\)とすると、
\[ W=W+W \] が成り立つ。

(3)

\(K\)上のベクトル空間\(V\)があり、\(\alpha\in K\setminus\left\{ 0_{V}\right\} \)として部分空間を\(W\subseteq V\)とすると
\[ W=\alpha W \] が成り立つ。

(4)

\(K\)上のベクトル空間\(V\)があり、\(\alpha,\beta\in K\)を\(\left(a,\beta\right)\ne\left(0_{K},0_{K}\right)\)を満たすとして、部分空間を\(W\subseteq V\)とすると、
\[ W=\alpha W+\beta W \] が成り立つ。

(1)

条件\(\boldsymbol{0}_{W}\in W\)は\(W\subseteq V\)が空でないときには不要である。
\(W\)が\(V\)の部分ベクトル空間なら\(W\)はベクトル空間となる。
何故なら2つの演算「\(+,\cdot\)」について閉じていて、\(W\)はベクトル空間\(V\)の部分集合なのでベクトル空間の条件を全て満たしているからである。

(2)自明な部分ベクトル空間と真の部分空間

ベクトル空間\(V\)があるとき、\(V\)自身と零空間\(\left\{ \boldsymbol{0}\right\} \)は同じ演算でベクトル空間となる。
この\(V,\left\{ \boldsymbol{0}\right\} \)の2つを自明な部分ベクトル空間といい、\(V,\left\{ \boldsymbol{0}\right\} \)以外の部分空間を真の部分空間という。

(3)

部分空間であるための和とスカラー倍の条件は、
\[ \boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W;a,b\in K\rightarrow a\boldsymbol{x}+b\boldsymbol{y}\in W \] と同値である。
これを示す。
\(\Rightarrow\)を示す。
\(a,b\in K,\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W\)であるとき、\(a\boldsymbol{x},b\boldsymbol{y}\in W\)となり、その和についても\(a\boldsymbol{x}+b\boldsymbol{y}\in W\)となるので、\(\Rightarrow\)が成り立つ。
\(\Leftarrow\)を示す。
\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W;a,b\in K\rightarrow a\boldsymbol{x}+b\boldsymbol{y}\in W\)が成り立っているとき、\(K\)は体なので\(0,1\in K\)であるので、\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W;0,a\in K\rightarrow a\boldsymbol{x}=a\boldsymbol{x}+0\boldsymbol{y}\in W\)が成り立ち、\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in W,1\in K\rightarrow\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}=1\boldsymbol{x}+1\boldsymbol{y}\in W\)も成り立つので、\(\Leftarrow\)が成り立つ。
従って、\(\Rightarrow\)と\(\Leftarrow\)が成り立つので\(\Leftrightarrow\)が成り立ち題意は成り立つ。

(1)

条件より\(W\)はベクトル空間\(V\)の部分空間であるので、和とスカラー倍で閉じている。
次にベクトル空間であるための条件を満たしていることを示す。
\(x,y,z\in W;a,b\in K\)とする。

加法の結合律

\(V\)で\(x+\left(y+z\right)=\left(x+y\right)+z\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

加法の可換律

\(V\)で\(x+y=y+z\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

加法単位元

部分空間の定義より\(0_{W}\in W\)であるので\(x+0_{W}=x\)となり、加法単位元\(0_{W}\)が存在する。

加法逆元

体\(K\)は乗法単位元\(1\)を元にもち、乗法単位元\(1\)の加法逆元\(-1\)を元にもつので\(-1\in K\)となる。
これより、\(-x=-1\cdot x\in W\)であるので、\(x-x=0_{W}\)となり、\(x\)の加法逆元\(-x\)が存在する。

スカラー分配律

\(V\)で\(a\left(x+y\right)=ax+ay\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

ベクトル分配律

\(V\)で\(\left(a+b\right)x=ax+bx\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

スカラーとベクトルの結合律

\(V\)で\(\left(ab\right)x=a\left(bx\right)\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

スカラー単位元

\(V\)で\(1x=x\)が成り立つので\(W\)でも成り立つ。

-

これらより、\(W\)は\(V\)と同じ和とスカラー倍を使うと和とスカラー倍で閉じていてベクトル空間であるための条件を満たしているのでベクトル空間となる。
従って題意は成り立つ。

(2)

任意の\(\boldsymbol{v}\in W\)について、\(\boldsymbol{v}=\boldsymbol{v}+\boldsymbol{0}_{V}\in W+\left\{ \boldsymbol{0_{V}}\right\} \subseteq W+W\)となるので、\(W\subseteq W+W\)となる。
また、任意の\(\boldsymbol{v}_{1}+\boldsymbol{v}_{2}\in W+W\)について、\(\boldsymbol{v}_{1},\boldsymbol{v}_{2}\in W\)であり\(W\)は和で閉じているので\(\boldsymbol{v}_{1}+\boldsymbol{v}_{2}\in W\)となるので、\(W+W\subseteq W\)となる。
これらより、\(W\subseteq W+W\)かつ\(W+W\subseteq W\)となるので、\(W=W+W\)となる。
従って題意は成り立つ。

(3)

任意の\(\boldsymbol{v}\in W\)について、\(\alpha\in K\setminus\left\{ 0_{V}\right\} \)より、\(\frac{1}{\alpha}\in K\setminus\left\{ 0_{V}\right\} \)であるので、\(W\)はスカラー倍で閉じているので\(\frac{1}{\alpha}\boldsymbol{v}\in W\)となり、\(\boldsymbol{v}=\alpha\cdot\frac{1}{\alpha}\boldsymbol{v}\in\alpha W\)となる。
これより、\(W\subseteq\alpha W\)となる。
また、任意の\(\alpha\boldsymbol{v}\in\alpha W\)について、\(\boldsymbol{v}\in W\)であり\(W\)はスカラー倍で閉じているので\(\alpha\boldsymbol{v}=\alpha\cdot\boldsymbol{v}\in W\)となる。
これより、\(\alpha W\subseteq W\)となる。
これらより、\(W\subseteq\alpha W\)かつ\(\alpha W\subseteq W\)となるので、\(W=\alpha W\)となる。
従って題意は成り立つ。

(4)

\(\alpha\ne0_{K}\)かつ\(\beta\ne0_{K}\)のとき、\(W=W+W=\alpha W+\beta W\)となる。
\(\alpha\ne0_{K}\)かつ\(\beta=0_{K}\)のとき、\(W=\alpha W=\alpha W+0_{K}W=\alpha W+\beta W\)となる。
\(\alpha=0_{K}\)かつ\(\beta\ne0_{K}\)のとき、\(W=\beta W=0_{K}W+\beta W=\alpha W+\beta W\)となる。
従って、\(\left(a,\beta\right)\ne\left(0_{K},0_{K}\right)\)のとき、\(W=\alpha W+\beta W\)が成り立つ。
故に題意は成り立つ。
スポンサー募集!

ページ情報
タイトル
部分ベクトル空間(線形部分空間)の定義と性質
URL
https://www.nomuramath.com/jopx277a/
SNSボタン